きましたね…!村上さんの新作長編小説「街とその不確かな壁」。
発売を知ってから、ずっと楽しみにしておりました。
今回の記事は、村上主義者の私が、ただただゆるく「街とその不確かな壁」の感想を書くだけの日記です。
村上さんの本は、スラスラ読める文体やリズム感が心地よいのと、ええ?!という世界観とリアルが織り混ざっていること、読んでいる間の没入感が気持ち良いこと、出てくるごはんが美味しそう、主要な登場人物がなるべく規則正しく生活を営もうと努力しているところが好きなどの理由で読んでいるだけなので、全然メタファーの考察とかはできません…。
意味がわからないところは、あまり深く考えないで読み進めるタイプの村上主義者です。
今回の記事でも本当につらつらと新作を読んだ感想を書いています。
あまり話の内容については踏み込まないように書いているつもりですが、一部ネタバレもあるかもしれません!
ネタバレなしで「街とその不確かな壁」を読みたい方は、お気をつけください。
「街とその不確かな壁」とは?
個人的に内容をまとめることは、私には困難なので、特設サイトから本の概要を引用させていただきます。
十七歳と十六歳の夏の夕暮れ……川面を風が静かに吹き抜けていく。彼女の細い指は、私の指に何かをこっそり語りかける。何か大事な、言葉にはできないことを――高い壁と望楼、図書館の暗闇、古い夢、そしてきみの面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。村上春樹が長く封印してきた「物語」の扉が、いま開かれる。
引用元サイト「新潮社の特設ウェブサイト」
https://www.shinchosha.co.jp/special/hm/
「高い壁」・「図書館」・「古い夢」というワードを見たら、もちろん思い浮かぶのは、私が一番好きな村上さんの小説「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」!
もしかして今回の長編小説は、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」と関連があるお話しなのかなと、ドキドキしながら本を開きました。
「街とその不確かな壁」の感想
それでは、「街とその不確かな壁」の感想を。
第一部
これまで読んできた村上春樹の長編小説とは全然違う印象を受けました。静かで、悲しくて…。
「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」との直接的な関連はなく、モチーフとして「世界の終わり」の壁に囲まれた街が同様に出てくるお話しでした。
よって、ハードボイルドワンダーランド的な計算士や記号士や、メロンのコロンをつけた女性や博士や図書館の司書の女性、やみくろなどは登場しません。
ただあの壁に囲まれた街のモチーフが使われている、全く別のストーリーです。
で、第一部は、だいぶ穏やかで静かで、村上作品にしてはリアル感が非常に強くて(突拍子もない展開がない)、これどんなふうに展開していくんだ??と思っていたら、第一部の最後で、私が予想していなかった方へ展開が始まり、第二部、第三部に続いていきます。
展開があまりなかった第一部は、これまでの村上作品の中で、正直一番読み進めるのに時間がかかりました。
村上作品のリズム感が好きなので、飽きるということはないのですが、どんどん読みたいという展開ではなかったような。
育児の合間に読んでいたため、読み進められなかったということもありますが…。
第二部
第二部は、村上さんらしい不思議な世界観と日常の織り交ぜがあり、主人公の日常についての描写があり、ファンとしては、キタキタ!とどんどん読み進められた章でした。
ただ「突拍子のなさ」の程度は、ほかの小説と比べると少ないと感じました。
村上さんの小説の主人公の男性は、仕事ができて(仕事に誠実で)、お金にそこそこ余裕があって(豪遊するという意味ではなくて、堅実で)、孤独を感じ、日々の生活をしっかりと営もうと努力し、女性になぜか好かれ…という方が多いように思っており、今回の主人公もそれに近いものはあったものの、「歳を結構取っている中年の方」であるという点が少し新鮮。
また子どもがいる方の人生についても、かなりしっかりと小説中で触れられているのも少し珍しい気がしました。
(子どもができてから初めて読む新作の村上作品だったため、私が単純に気になったのかもしれません。)
第三部
第三部は、本当に短く、エピローグのような印象もあるような内容。
第二部でお話しが終わっていても、私は全然違和感を感じないと思います。
でもこの第三部があることで、前の部分で起こったことへの、具体性が加わるような印象を持ちました。うまく説明できませんが…。
作品全体を通して思ったこと
作品全体を読み終わってまず感じたことは、
もしかして、初めて村上作品を読む方にとっては、一番読みやすい村上春樹作品なのでは?ということ。
ただし、展開が少ない第一部で離脱する人もいるかもしれませんね…。
また、もしかして数少ない映画化できる村上さんの長編小説なのかなという印象も持ちました。
村上作品って、映画化できるのか?というと、できないだろうなあというお話が多い。
「街とその不確かな壁」は、できなさそうなシーンもあるけれど、やろうと思えばできるかも…??という印象を持ちました。(壁に囲まれた街を再現するのは難しいか…。)
それくらい、現実の要素が多いお話しに感じました。
あとは、外に向かっていくお話というよりは、重たさがあって、海に沈んでいくように読める物語だったということ。暴力的なシーンも少なく、穏やかで、登場人物の心の変化などについてもじっくりと描かれている印象がありました。
さいごに
以上簡単ですが、村上春樹の新作「街とその不確かな壁」を読んだ日記でした。
噛み締めるように、しみじみと深いところに入っていきたいときには、この作品は良いですねえ。
…ただ個人的には、「世界の終わりとハードボイルドワンダーランド」や「ダンス・ダンス・ダンス」の方が好みでした。読んでいるとびっくりするところへ連れて行かれてしまうあの力強い勢いのある感じが、気持ち良いんですよね。
あと余談ですが、自宅保育で1歳児を育てながら小説を読むのって、私には結構ハードルが高かったです。
本を読む時間といえば、お昼寝中か子どもが寝てから。読書が何よりも癒しというという方は、この時間に本を読むことへのハードルなどは感じないと思いますが、この時間はようやく一人になれた!という嬉しさが勝りすぎて、本当にダラダラしたり、ボーッとしていても楽しいテレビや映画を見たりすることが多いんです…。
あとは、家事や作業などにも追われていることが多く、なかなか本を読めないんですよね…。
少しずつ工夫して読書時間を作っていきたいところです。
好きな村上春樹作品については、下記記事にまとめています。
よろしければチェックしてみてください!